映画「夕凪の街桜の国」

こうの史代原作の同名のマンガの映画化です。原爆投下から13年後(原作では10年後)の広島を舞台にした「夕凪(ゆうなぎ)の街」と現代の東京と広島を舞台にした「桜の国」の二章に分かれています。広島市を舞台にした映画ですから,広島弁がかなりのシーンで使われています。生き残った被爆者と被爆二世とその家族の悲惨さや悲しみなどを描くとともに,命の大切さや今生きていることの喜びを描いています。

監督・脚本:佐々部清,脚本:国井桂,出演:田中麗奈,麻生久美子,吉沢悠,中越典子,伊崎充則,金井勇太,藤村志保,堺正章,田山涼成,粟田麗ほか

「夕凪の街」のヒロイン・平野皆実(麻生久美子)は,原爆症に対する恐怖と被爆して生き残ったことへの罪悪感を持ちながら生きています。彼女は同僚の打越(吉沢悠)にほのかな思いを寄せます。彼からから愛を告白されますが,発病して帰らぬ人となります。

「桜の国」は皆実の姪・石川七波(田中麗奈)が同級生・利根東子(中越典子)と,不審な行動をする七波の父親(皆実の弟)・石川旭(堺正章)を東京から広島まで追跡します。七波は広島市で自らのルーツを再認識します。

二人のヒロインは原爆による被爆者と被爆二世という「被爆」という共通点を持たせてありますが,「桜の国」の章に変ると活動的なヒロインの出現によってテンポの良いストーリーに変わってゆきます。

この映画の中で出演者が歌う「赤とんぼ(作詞:三木露風,作曲:山田耕筰)」,「月がとっても青いから(作詞:清水みのる,作曲:陸奥明,歌:菅原都々子)」,「お富さん(作詩:山崎 正,作曲:渡久地政信,歌:春日八郎)」,「Diamonds(作詞:中山加奈子,作曲:奥居香,歌:プリンセス・プリンセス)」は懐かしくもあり,またその歌詞によってその後のストーリーを感じさせます。

「夕凪の街」では,1958年ころのカメラや軽三輪トラックやこのころ広島市内に残っていたトタン屋根のバラックを懐かしく見ました。また,「桜の国」では,広島県西部のお墓に盆灯篭を立てる珍しいお盆の風景を見ることができます。

広島市では7月21日から先行上映されています。雨の日曜日でシネマコンプレックスでチケットを買うのに30分間順番待ちをしました。チケット販売には8人のスタッフが対応していましたが,すごく長い列ができていました。広島ではこの映画のテレビ・コマーシャルも流れていますが,ほとんどの方は,「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」と「西遊記」を見るための列でしょう。ちなみにこの日の上映回数は「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」が18回(日本語吹き替え版を含む),「西遊記」が10回でした。「夕凪の街 桜の国」は小さなスクリーンの劇場で5回です。世界中の若い人に見てほしい映画ですが,私が見たときは70人くらいの観客のほとんどが中高年でした。

私は昭和20年8月には爆心地から80㎞くらい離れた所に住んでいましたから原爆の影響は受けていません。しかし,1958年には広島市に住んでいて,時々銭湯に行っていました。この映画の銭湯のシーンにあるように身体にケロイドのある方をよく見かけていました。同じ職場の先輩にも背中にケロイドのある方がいました。彼は爆心地から離れていましたが,ちょうどあの時間に上半身裸で爆心地を背にして,タオルで身体を拭いていたそうです。同僚には父親を原爆で失った方がいて,8月6日の夜,この方と一緒に広島平和記念公園に行って「とうとう」を流したことがあります。

印象に残ったセリフ(記憶ですから正確ではありません)の中に,
皆実と旭の会話の中で,旭が「なんで原爆が落ちたんじゃろ」と言うと,皆実が「原爆は落ちたんじゃない。落されたんよ」というのがあります。
皆実と打越のシーンで,皆実が「どこかで,お前の住む世界はそっちじゃないという声がする・・・・うちは,この世におってもええんじゃろうか」と言うと,打越が「生きとってくれて,ありがとうな」と抱きしめるシーンがあります。
また,皆実が原爆症を発病した後に,「13年も経って,原爆を落とした人はまた一人殺してやったと思っていてほしい」という趣旨のセリフはがあります。

はかない女性を好演した麻生久美子がインタビュー記事で,「出演が決まった昨年4月,原爆資料館を四時間かけて見学した。「心は痛いし,怒りも出てくるし,切ないし,いろんな感情が渦巻いて涙は流れるし,どっと疲れた」と表情を曇らせる。「でもこの役を演じる者,次の世代に伝えていく者として,知ろうとしない,知りたくないでは済まない」と感じた。」(中国新聞2007.7.22朝刊)とありました。

日本政府の閣僚が原爆投下について,「しょうがない」という趣旨の発言をなさったとの報道がありました。閣僚がアメリカ合衆国の言い分を代弁するのはもってのほかです。マスコミが閣僚の発言として不適切だと非難するのは当然です。

この発言によって「寝た子を起こした」わけですから,アメリカが一般市民(非戦闘員)を虐殺した責任をあいまいにしてよいものかと思います。しかし,日本のことわざに「長いものには巻かれろ」というのがありますが,これでは,「しょうがない」と同じ思考になってしまいます。この際冷静に考えてみてはいかがでしょうか。

広島市平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑の石室前面には,「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」と刻まれている。この碑文の主語を「すべての人びとが」と解説する案内板が設置されています。この碑文が一種の反省文なら責任者が主語になるのでしょうが,今だに理解しにくい文章です。

キャッチコピーは「生きとってくれて ありがとう」です。生きているということは,忘れてしまいたい切なくて悲しいできことも思い出すものです。この映画の前半はは忘れてしまいたいことを思い出させるそのような感じがします。そして後半は命の大切さ,生きている喜びや家族の絆を感じさせる映画でした。

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この記事へのコメント

たんぽぽ
2007年07月23日 19:44
こんばんは。
「夕凪の街桜の国」見たい映画ですね。
私は、市内ですが原爆は知りません。
でも、子供のときに「ふるさとの町焼かれ・・・ああ、許すまじ、原爆を。みたび許すマジ原爆をわれらの町に~~」歌ったことを覚えています。
絶対に忘れてはいけない事実ですね。
詳しい映画のご紹介有難うございます。
映画を見たような気さえしますよ。

世界には、たくさんの「核」があります。
今度使われたら、地球は破滅です。

夢楽
2007年07月23日 21:45
たんぽぽさん こんばんは 
切ない映画でした。特に前半は。映画をエンターテイメントと見る方が多いのは当然のことですが,社会性のある映画も時にはみて欲しいのです。この映画が広島と長崎以外でも理解されるといいですね。
pencil skirt
2007年07月24日 08:02
はじめまして。
夢楽さまのブログを読んでたら涙が頬を伝いました。
映画のシーンを想い出して・・・。
娯楽性の強い映画が公開される夏休み。
「あーー面白かった」という映画も一時を忘れることができ、好きですが、麻生さんがコメントされたとおり、「知ろうとしない、知りたくないでは済まされない」事実をこの映画を観て再認識する人がひとりでも増えればと思います。
http://pencil-skirt.at.webry.info/
夢楽
2007年07月24日 10:41
pencil skirtさん はじめまして
この映画は思い出したくないことを思い出させてくれました。世界中の若者が一人でも多く見てほしいと思います。
ブログを拝見しました。面白いサイトですね。昨日,角島に行きました。

すぅ~
2007年08月16日 14:54
私も昨日観ました・・・7月に広島に行き献花台から離れられず三脚立てカメラのファインダーを覗き・・何度も手を合わせ涙を流しました・・・
私のブログにも遊びにきて下さい。http://wasurenagusa-to-me.mo-blog.jp/blog/

麻生さんの演技素晴らしかったです。関東は11日から公開でした。
切なさと、優しい素朴な笑顔と透き通るような肌・・・
今は、幸せすぎて物がありふれている時代!
若い人・・(自分も含めて)戦争、原爆、重い話しかもしれないけれど
未来を担う子供達に受け伝えて行かなければならない大切な事です。
夢楽
2007年08月17日 21:49
すぅ~ さん こんばんは
「勿忘草」を拝見しました。“頑張り過ぎずゆっくりと”いい言葉ですね。
映画「夕凪の街桜の国」を 一人でも多くの人に見てほしいと思っています。